〇打上げ種々相

当時私の所属していた合唱団は年一度のオケ協演で出演者数も多く、打上げはにぎやかなものだった。

  参加者の気持ちではソリストのお勤めは舞台での上演だけでなく打上げに顔を出していただくところまでギャラに含まれると思っていて、ソリストの先生方もそれをよく心得て気の利いたスピーチで上手に「ヨイショ」して盛り上げて下さる。

   ある時打上げ会場へとゾロゾロ移動する途上で男声ソリスト二人がいらっしゃったので「先生方も打上げへ?」と尋ねたら翌日のスケジュールの都合で今日中に帰京しないといけないとのこと。どうも空港リムジンバス待ちかとも見えたが一応「団長さんにそう言っておきますね」と受けておいたがそれは団長に直接言うべきことじゃないかと何となく敵前逃亡のような後味の悪い感じがしたことだった。

  そのコンサートとは別のときだったが、当時東京藝大の助教授だったメゾのN先生が「今回は都合で早帰りで打上げ失礼します。 これを打上げの席上読み上げて下さい」と手漉き和紙便箋2枚にメッセージをしたため封筒に入れて団長にことづけられたのはさすがと感じた。

 

2021.04.20