〇応用音楽

前回、巡回セールスマン問題が応用数学だと書いたが、音楽にも純粋音楽と応用音楽があるのではないか。

テレビ体操の伴奏ピアニストに、能條さんというイケメンさんが数年前から加わっている。

この仕事は、単にラジオ体操第一と第二の伴奏音楽を譜面通りに弾くだけでなく、それらの間に挟まれたりする指導の先生オリジナルの演技に、それにフィットする伴奏を添えることも大事な仕事である。

というのも、アシスタントのお姉さんの演技の「振り」に合わせたリズム、テンポ、強弱、旋律を、それも二ヶ月ごとに新しく自分で作曲して演奏しなければならないからである。

こういうのを応用音楽と言えるだろう。

それが、能條さんは、めっちゃ上手い。 それもただ演技に合わせるというだけでなくその中に自分の持っている音楽、自分が表現したい音楽を、見事に盛り込んでいるのだ。

大げさになることを承知で言えば、チャイコフスキーのバレエ音楽にも匹敵するものだ。

NHKも、いい人を引っ張ってきたものだ。

(補記)この原稿を書いているとき、偶々新聞にアーティスティック・スイミングの演技のための楽曲を提供している作曲家の記事が見つかった*。 フィギュアスケートの場合は大体出来合いの曲が使われるようだがこれはオーダーメードで、「応用音楽」がここにも活躍の場を持っている。

 

*日経(夕)2021.1.149頁 

2021.02.09