〇 剣(つるぎ)

  前回冒頭の「〽」、何のことかおわかりになりましたか。 あれは「いおりてん」と言ってもともと縦書きのときに使う記号なんですが、ウィキペディアで引いて下されば丁寧な説明があります。

  ウィキペディアってこのように便利なものなんですが、時にはヘンなこと書いてあることもあります。

  その例が、荒城の月の歌詞です。 ウィキペディアで「荒城の月」を引くと

#_歌詞二番「秋陣営の

のところには、『戦いにより地に突き刺し捨てられた剣を「植うるつるぎ」とし』

と書かれています。

  これ読んで違和感感じませんか? 以下、三つの観点からその違和感の中身を見ていきましょう。

    「常識」の観点

大体、剣を地面に突き刺せるものか。 よく耕された畑のような柔らかい地面でなく、堅い、石ころだらけの地面です。 そこへ、捨てる剣を、わざわざ手間をかけて突き刺しますかね。

    「文法」の観点

「植うる」だと、「剣が」「植える」であって、では何を植える?ということになります。

剣が「植えてある」のなら、「植えたる」とならないと意味が通りません。

    「傍証」の観点

幸田露伴の名作『五重塔』の終わり近く、「其三十一」節に「(ナンジ)らが()(ツルギ)()えたり 汝ら剣に(ショク)を与えよ 人の膏血(アブラ)はよき食なり」とあります。 これだと剣がお腹をすかせてギラついていて月の光がそれに輝きを添えるというイメージがすっと理解できます。

  どうです、それでも「植うる」でいきますか?

 

2021.10.05